この事例の依頼主
女性
相談前の状況
夫の遺言書に、「全ての財産を長男に相続させる。」と書かれていた奥様の代理人としてお手伝いさせていただいた事例です。依頼者様は、夫と婚姻関係にあったものの、家庭内別居の状態にありました。夫から生活費をもらうこともできず、経済的に苦しい状況にありました。夫が亡くなった後、夫の遺言書が見つかりました。そこには、「全ての財産を長男に相続させる。」と書かれていました。依頼者様は、自分は何も相続できないのか、何か方法はないのか、ということでご相談に来られました。(※個人の特定を避けるため、一部事例を変更しています。)
解決への流れ
私は、依頼者様に対し、「遺留分」についてご説明いたしました。遺留分とは、遺言書でもっても侵害することができない、法律上保障された相続財産の割合のことを指します。例え、夫が全ての相続財産を長男に相続させる旨の遺言書を書いたとしても、妻は、遺留分の範囲で相続財産を取得することが可能です。そこで、当方は、直ちに長男に対して、内容証明郵便を送り、依頼者様の遺留分が侵害されていること、遺留分の範囲で相続財産を返還するよう求めました。交渉の結果、依頼者様は、長男より、遺産全体の4分の1に相当する不動産及び現金を取得することができました。
遺留分を回復するためには、①相続が開始及び遺留分の侵害があったことを知った時から1年以内、かつ、②相続の開始から10年以内に遺留分減殺請求権を行使する必要があります。そのため、遺留分が侵害された場合、早期に対応する必要があります。しかし、遺留分の計算、行使の方法等は、専門的な知識が不可欠です。今回の事例では、依頼者様が早期に相談に来られたため、最良の結果を得ることができました。参考条文:民法第1042条減殺の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。