この事例の依頼主
年齢・性別 非公開
父親が死亡し長男A氏が相談に来られて、弟B氏は自営業をしており、父の生前に2500万円の資金援助をうけていました。B氏の長男の大学進学資金として1000万円、B氏の長女の大学進学に800万円父から支払ってもらっていました。A氏は自宅を建てる時に1000万円父親から援助してもらっていましたが、A氏の息子と娘が大学に進学する際には援助はしてもらっていませんでした。父の遺産は宅地と居宅、甲銀行定期預金1000万円、甲銀行普通預金300万円、乙銀行普通口座200万円、ゆうちょ銀行定期1700万円、ゆうちょ銀行普通800万円であるとのことでした。遺産分割を適正にするために弁護士に委任に来られました。
本件の問題点は、生前贈与などの特別受益を明確にさせることです。弟のB氏と交渉を始めて特別受益の事実について確認したところ、B氏の長男の大学進学の1000万円と長女の大学進学の800万円は父親から支払いを受けたことを認めましたが、2500万円の営業資金援助については約5年間で1000万円は父親に返済しているとの主張でした。そこで、父親が取引をしていた金融機関に取引記録の開示を求め調べてみましたが、B氏からの返済を裏付ける振込の記録は確認できませんでした。当職は、家庭裁判所に遺産分割調停の申立てを行いました。まず、父親の遺産額の評価を行いました。土地は土地公示価格、相続税路線価、固定資産税路線価及び不動産会社の評価額などから2800万円、建物400万円で合意が出来ました。甲銀行定期預金1000万円、甲銀行普通預金300万円、乙銀行普通口座200万円、ゆうちょ銀行定期1700万円、ゆうちょ銀行普通800万円であるとのことが確認できました。以上合計額がみなし遺産額として7200万円となりました。兄弟の分割額は2分の1となるため、各々3600万円が相続額となります。特別受益については下記の通り判断されました。【A氏】A氏の父親からの自宅建築の援助資金1000万円【B氏】B氏の長男の大学進学の資金援助1000万円B氏の娘の大学進学の資金援助800万円B氏の父親からの2500万円の資金援助については、B氏が1000万円返済を裏付ける立証資料がなく、結論として特別受益と判断されました。遺産分割額を計算すると、下記のようになりました。A氏は、3600万円―1000万円(新築資金援助)+2500万円(B氏の営業資金援助)+1000万円(B氏の息子の大学進学援助)+800万円(B氏の娘の大学資金援助)=6900万円B氏は、3600万円+1000万円―2500万円―1000万円―800万円=300万円相続遺産の分割は、A氏は土地、建物、甲銀行定期預金1000万円、甲銀行普通預金300万円、乙銀行普通口座200万円、ゆうちょ銀行定期1700万円、ゆうちょ銀行普通800万円を単独取得するが、代償金としてB氏に300万円支払うことで家庭裁判所の審判で決まりました。
相続開始以前に特別援助を受けている場合には、後の相続の際に考慮されることとなりますので、しっかり把握しておくことが大切です。又、資金援助に対して、返済を行った場合には、返済を裏付ける資料を手元に保管しておく必要があります。