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ツイッターで歌詞をつぶやいたら、著作権法に触れる?
「『ツイッターで歌詞つぶやくと利用料』 JASRACの説明にネットが騒然」。このような見出しの記事が今年のひな祭りの日、3月3日にネット上で話題になった。記事はネットメディア「J-CASTニュース」のもの。だが、日付をよく見ると、2010年3月2日と書かれており、3年前のものだとわかる。それが、なぜか今頃になってネット上で拡散されたようだ。
この記事によると、JASRAC(日本音楽著作権協会)の菅原瑞夫常務理事(現理事長)が2010年2月28日のニコニコ生放送の番組内で「ツイッターで歌詞をつぶやいたら、JASRACの利用料が発生する」と発言したという。また、当時のJASRACの見解として、「ツイッターで歌詞を書いた場合は著作権法に抵触する」「使用料については現在検討している」ということも記事に書かれている。
JASRACは音楽の著作権を管理する団体で、著作者に代わって利用料を徴収する業務を行なっている。今回の騒ぎを受けて、JASRAC広報に問い合わせてみたところ、ツイッターで歌詞をつぶやいた場合の利用料について「現在も検討中だ」と答えた。
では、そもそもツイッターで歌詞をつぶやいたら、著作権を侵害していることになるのだろうか。また、どういった場合に侵害にあたるのだろうか。著作権法に詳しい福井健策弁護士に聞いた。
●「無断で長めの歌詞などをつぶやくと侵害にあたる可能性がある」
福井弁護士によると、ツイッターで歌詞をつぶやいた場合、著作権に触れることになるかどうかは「場合による」。
「歌詞全体は基本的に著作物ですから、著作権が働きます。そして、ツイッターでつぶやく行為は複製権(著作権法21条)や公衆送信権(同法23条)にかかわりますから、無断で長めの歌詞などをつぶやくと侵害にあたる可能性がある、というわけです」
ということは、つぶやいた歌詞の長さによって、侵害にあたるかどうかが変わるということだろうか。
「まず、著作権が働くのは『創作的な表現』であって、ごく短いフレーズはなかなかあたりません。ですから、既存の曲から、歌詞のごく短い一部だけを借りてくる場合には、ひとの著作物の利用にはならず、問題はありません。
どの程度の短さなら良いかと簡単には言えませんが、私はかつてコラムの中で『♪にくいよ!この、ど根性ガエル』(『ど根性ガエル』主題歌のフレーズ)程度はいいのでは、と書いたことがあります。
他方、歌詞ではありませんが、短いフレーズという点では、かつて裁判で『ボク安心 ママの膝よりチャイルドシート』という交通標語が、いわばギリギリで著作物だと認められたことがあります。このあたりがひとつのヒントになるかもしれませんね」
さらに、福井弁護士は「著作権法では『引用』は認められています」と付け加える。著作権法32条を見てみると、「公表された著作物は、引用して利用することができる」とあり、また「その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない」とある。
「ですから、既存の歌詞についてコメント・批評などするために借りる場合には、一定の条件でもう少し長めのフレーズでも使えるケースはあるでしょう 」
●JASRACと事業者との間で取り交わされる「包括契約」とは?
今回、JASRACに問い合わせたところ、「個別に利用料を請求することは現実的な対応ではない」とした上で、「建設的なライセンスを結べるようにツイッター社と交渉していかなければと考えているが、合意に至っているわけではない」という返答があった。これはどういうことを意味するのだろうか。福井弁護士は次のように解説する。
「日本では、ほとんどのプロの作詞家・作曲家は、JASRACなどに歌詞・楽曲の著作権の管理を委ねていますから、申請して利用許可をもらえば使えます。ただ、つぶやくたびにJASRACに申請するのは、到底現実的ではないですよね。
そこで、『包括契約』という考え方が出てきます。これはツイッター社などの事業者がJASRACなどと年間の契約を結んでしまって、ユーザーがJASRACの管理曲をつぶやく行為について一括して許可を受ける。そして、曲の個別申告などは不要にして、たとえばツイッター社の年間収入から一定割合の使用料を納める方法です」
福井弁護士によると、「テレビなどの放送局がアーティストの楽曲を流せたり、ネット動画サイトのニコニコ動画やYouTubeで、『歌ってみた』『踊ってみた』などをユーザーがアップできるのも、事業者がJASRACなどと包括契約を結んでいるから」なのだという。このように実情を説明した上で、福井弁護士は「そうした契約を早く交わすことが、ひとつの現実的な解決でしょうね」とまとめた。
今のところ、ツイッターで歌詞をつぶやいて、JASRACから利用料を請求されたという話は聞かないが、安易な気持ちで歌詞をツイッターでつぶやくと、著作権を侵害する場合があるということは意識したほうが良いだろう。
「イートイン脱税」「正義マン」より害悪なのは「軽減税率」そのもの…弁護士が法的問題を検証
10月1日から消費税が10%に増税され、飲食料品と新聞を税率8%にする軽減税率が導入された。コンビニなどのイートインコーナーを利用する場合は、軽減税率が適用されない外食と同じ扱いになるため、店に申告して、税率10%で利用する必要があるが、申告をしないまま利用する行為が「イートイン脱税」だとして、問題視されている。
産経新聞によると、麻生太郎財務相は10月8日の会見で、この問題について、「業界団体などを通じ実態把握に努めないといけない」、「周知、広報を含め、軽減税率制度の円滑な実施・定着にむけて必要な対応を講じたい」と話している。
国税庁は「倫理上はともかく、制度上の問題はない」としており、罰則もない。「イートイン脱税」を見つけても、コンビニ側は深追いしない運用にしているため、客に申告を促す以外に、止めようがない状況だ。
法律上は、詐欺罪にあたるのではないかという指摘もでているが、法的な問題はないのだろうか。林朋寛弁護士に聞いた。
若者に人気の「ルームシェア」 ルームメイトを募集する前にチェックすべき点は?
若者を中心に人気の「ルームシェア」。よくあるのは、3LDKのマンションを3人の友達同士でシェアするといったパターンだが、仲の良い友人だけでなく、それまでまったく知らなかった人と共同生活を送るケースも珍しくない。
インターネットには、ルームメイトを募集できるサイトもいくつか存在している。空いている部屋があれば、部屋の間取りやシェアする期間、家賃の分担など、さまざまな条件を示して、同居人を募集することができる。
そんなルームシェアだが、みんなで住むのはマンションなどの賃貸住宅で、別に大家がいることも多いだろう。そのような場合、大家に断りなく、ルームシェアを勝手に始めて良いのだろうか。ルームメイトを募集するときに気をつけるべきポイントについて、魚谷隆英弁護士に聞いた。
弁護士の情報収集も「ネット中心」へ 「法令データベースの利便性は年々向上」
『セレクト六法』や『基本六法』など、憲法・民法・刑法を始めとする主要な法律を集めた「法令集」を刊行してきた岩波書店が昨秋をもって、法令集の発行を終えていたことが明らかになった。岩波書店は1930年から、一般大衆向けに手頃な価格で「六法」を発行してきたが、昨年の秋に出版された「平成25年版」の刊行を最後に、「岩波版六法」の歴史に幕を閉じることになった。
岩波書店のホームページには、「インターネットの普及等により条文や判例へのアクセスも多様化した結果、大学教育等の場において六法の需要は低迷し、その在り方が問われる状況が現出している」と記されており、「紙」から「ネット」へという時代の流れによるものだということがわかる。
この「岩波版六法」の刊行終了が象徴するように、いまや法令や判例は、紙の法令集や判例集をめくるのではなく、インターネット上の法令データベースにアクセスして、情報収集をするのが当たり前になってきているのかもしれない。
はたして、法令や判例の情報を得る手段は、すでにインターネットが中心となっているのか。それとも、まだまだ紙の法令集や判例集の方が、主要と言えるのか。弁護士ドットコムに登録する弁護士に対してアンケート調査を行なった。
●過半数の弁護士が「紙」よりも「ネット」を重視
弁護士ドットコムでは、「法令や判例の情報を得る手段」について弁護士にたずね、以下の5つの選択肢から回答を選んでもらった。25人の弁護士から回答が寄せられ、次のような結果となった。
(1)ほぼネットだけである
→3人
(2)ネットが中心で、紙は補助である
→10人
(3)ネットと紙が半々である
→7人
(4)紙が中心で、ネットは補助である
→5人
(5)ほぼ紙だけである
→0人
このように、回答した弁護士のうち40%にあたる10人が、法令情報を得る手段について、<ネットが中心で、紙は補助である>と答えた。<ほぼネットだけである>の3人を含めると、半数以上がネットに利便性を感じていることになる。その理由として、次のような意見が見られた。
「検索の時間が短縮できる」
「書籍は場所を取るため、電子化したほうが省スペースになり、便利だと思う」
「紙媒体を持ち歩くのが面倒だから」
「紙媒体では網羅できない条例や、細かい法令・規則なども最新のものを探すことができるから」
●「紙が中心で、ネットは補助である」という意見も
回答者のうち28%にあたる7人の弁護士が、<ネットと紙が半々>という意見を支持した。その理由は、次のようなものだ。
「インターネットでだいたいのあたりをつけて、詳細は紙ベースで確認することが多いため」
「ネットの方が手軽だが、判例集の詳しい調査は、紙媒体のものを確認することが多い。法令集は即時性を重視するため、ネットを中心としている」
「法令判例データベースの利便性は年々高くなり、事務所にいながら膨大なデータにアクセスできるので、事件やキーワードが特定できる判例や法令などに利用している。一方で、紙媒体の判例集は、編者により各事項について選別された上で整理されているので、ある分野の法令や判例について知りたいとき(事件の特定が困難なとき)に利用している」
一方で、<紙が中心で、ネットは補助である>という回答した弁護士は5人だった。次のような意見があった。
「裁判所への証拠としての提出もできるから」
「ネット情報は個々の情報が分断されているのに対し、紙情報は有機的なつながりがある」
他にも、「情報の信頼に違いがあるから」という声もあった。なお、「ほぼ紙だけである」を選択した弁護士は0人だった。
弁護士から寄せられた回答を見てみると、どちらも一長一短があるようだ。また、それぞれの仕事のスタイルや事務所のスペース状況なども影響しているのかもしれない。いずれにせよ、選択肢が増えた、ということは言えるだろう。
岡口判事の投稿めぐる訴訟が結審 女子高生殺害事件の遺族「執拗な投稿で悲しむ権利奪われた」
弾劾裁判所に訴追された仙台高裁の岡口基一裁判官(職務停止中)が、その要因の1つとなったSNSへの投稿をめぐり、女子高生殺害事件の遺族から損害賠償を求められている訴訟は10月28日に結審した。2023年1月27日に判決が言い渡される。
星野源さん「ネットの噂は事実無根」、暴露系インフルエンサーの「W不倫情報」投稿、名指ししなくても名誉毀損になる?
シンガーソングライターで俳優の星野源さんが所属する芸能事務所「アミューズ」の法務部は5月23日、インフルエンサーの「滝沢ガレソ」氏のX投稿について「虚偽の情報の拡散、発信には法的措置を検討いたします」との考えを緊急表明した。
滝沢氏の投稿は、星野さんを想起させるような内容と言えるものだったが、星野さんを直接名指しはしていなかった。このような投稿は、名誉毀損などの法的問題はあるのだろうか。弁護士が解説する。
国による裁判手続〝盗聴〟問題、労働弁護団も声明 弁護士業界から抗議あいつぐ
国を被告とする事件で、国側の指定代理人が弁論準備手続を録音していた問題で、日本労働弁護団は10月26日、「法治国家にあるまじき言語道断の事態」などとする抗議声明を発表した。
問題が起きたのは、在日米軍基地で働いていた女性による労働事件で、録音を発見した原告側代理人の笠置裕亮弁護士は同弁護団に所属している。
声明は、録音機が個別聴取のときも作動していたことについて、「卑怯かつ不正な手段を用いて国にとって有利な結果を得ようとするものであり、〔……〕労働者の権利・利益に対する重大な侵害行為」と指摘している。
この事件をめぐっては、自由法曹団も同日付で、「国民の裁判への信頼を揺るがし、国民の人権を著しく侵害する」行為だと非難する声明を発表した。
笠置弁護士の所属する神奈川県弁護士会も10月20日に、抗議の会長談話を発表。法務大臣などに事件の真相解明と再発防止を求めている。
このほか、青年法律家協会(青法協)弁護士学者合同部会も10月21日に抗議声明を発表するなど、弁護士業界から厳しい視線が注がれている。
「漫画村」元運営者、フィリピンで拘束…日本に戻ってきたら「どんな罪」に問われる?
海賊版サイト「漫画村」の元運営者とされる男性が、フィリピンの入国管理局に身柄拘束された、と報じられている。今回の逮捕について、著作権にくわしい専門家はどのように見たのだろうか。
共産党が「アンパンマン」権利者に謝罪、演説会で着ぐるみ登場「支援者が入ってた」
日本共産党の演説会でアンパンマンの着ぐるみが応援にくわわり、三重県津市の女性市議がTwitterに動画を投稿していた件で、共産党側が著作権者に謝罪していたことがわかった。演説会を主催した党の三重県委員会が3月28日、弁護士ドットコムニュースの取材に明らかにした。
投稿した中野裕子市議にかわり、主催の三重県委員会が説明したところによると、着ぐるみに入っていたのは「支援者」だったという。
「支援者のお一人が演説会を楽しく盛り上げたいと手作りの着ぐるみを着て参加され踊られました。中野市議もともに踊り、その動画をTwitterに投稿しました」
また、これまでにアンパンマンの着ぐるみを政治利用したことはないとしている。
「当該案件は誤った行為であると判断し、投稿を削除するとともに、著作権者に対して、事実の報告とお詫びを申し上げました」
都立高の6割で「地毛証明書」提出させる…弁護士「不合理な差別を助長している」
東京の都立高校の約6割が、髪を染めたり、パーマをかけていないかを調べるため、一部の生徒から入学時に「地毛証明書」を提出させていることが朝日新聞で報じられ、ネット大きな話題になった。
朝日新聞が都立高173校に取材したところ、170校が取材に応じ、全体の57%にあたる98校で地毛証明書が「ある」と回答したという。多くは保護者が「髪の毛が栗毛色」「縮れ毛」などと記入して押印する形。幼児期の写真を提出させるケースもあるという。
このニュースに対して、ネットでは、「人権侵害ではないか」などの声が噴出している。これまでも、地毛が茶色い学生や、天然パーマの学生が、学校の指導で不快な思いをしたという体験談は数多く聞かれる
地毛証明書を提出させることに、どんな問題があると考えられるのか。高島惇弁護士に聞いた。